エマニュエル・ドッド 保護主義を語る 2008/10/30

朝日新聞朝刊の目次欄に、
「社会全体を考えない自己愛的な行動が経済危機をもたらした」
とある。「自己愛的」って、社会全体を考えないということと
結びつかないと思う。
書いている人は仏人口統計学・歴史学者トッド氏とある。
人口統計学と歴史学は自然に結びつきそうで
ちょっと違うようで微妙でもある。

「北米、欧州、極東に保護主義的な経済圏をつくって立て直せ」
との意見。
私は保護主義的とはいわないが、
北米、南米、アフリカ、欧州、東アジア、中央アジアに分けて、
共同体をつくり、経済だけをコントロールするのが一案だと思う。
そして世界銀行の業務を少しだけ拡大して、
各共同体の代表が任務に当たるようにする。

それを保護主義的などというから過度に刺激的になる。

通貨を固定して固定相場制にするだけでずいぶんと違う。
それだけでいいのだが、今となってはそれが難しい。
マルクとフランがどうして妥協できたのか今も分からないが、
元とウォンと円とが妥協できるかというと
なかなか難しいように思う。
そこで妥協するくらいなら徹底的に戦えとか言い出しそうだ。


資本主義では、発展しつつ拡大しつつ、というのが合い言葉になるが、
いつまでもそんなはずもない。
マーケットが期待する成長の速度は達成できないことも多く、
今回のようなことになる。

実体経済の5パーセントの範囲でマーケットが機能するようになどと
すればいいのだが、
当然、リバタリアンはその業務規定を逆手にとってマーケットに挑むことになる。
困ったものだ。
どうしよう。というわけで、みんな困っている。
社民主義が何かの答えを持っているわけでもないし、共産主義が答えを持っているわけでもないと思う。

フリーマーケットはどこまでフリーなのか、その制限をつけたとすると、
そのぎりぎりのところで、またしても暴走が始まるだろうと思う
人間はそのように考えるものなのだ

仕方がないので、欲をかいた人間は、損をすることもあると
いつも発信しておくことが大事だろう


エマニュエル・ドッド氏によれば、概略、次のようである。

米国は解決をもたらす存在ではなく、問題をもたらす存在である。
(無論、昔からそうだった。しかし黄色人種を激しく差別して搾取するフランスよりも好きだ。日本がフランス語主義にならなくて良かった。)

社会全体を考えずに自分のことばかり大事にする自己愛、自己陶酔の意識だ。
(社会全体を考えずに自分のことばかり大事にするのは自己愛の本質ではない。自己陶酔と言い換えられては困る。不正確。利己主義といえば通じる。)

フランス5月革命。禁じることを禁じる・自由がすべて。
(相変わらずこの話。)

こんな考えが経済にも広がっていったのが現在の結果だ。
経済を動かす連中が好き勝手に振る舞う。国家は動かない。
(それでいいはず。なにを今更言っているか。自由の実験をして、人間の理性に欠陥があったら訂正すればよい。それだけのことだ。金持ちが没落するのは昔からあったことだ。同情はいらない。)

自己愛的な行動が行くところまでいってしまったのだろう。
(自己愛的ではなく、利己的という意味だろうが、人間は、最初から利己的で、一貫しているのだから、それでいい。利他主義を他人に押しつけるくらい醜悪なものはない。)

ウルトラリベラリズム(行きすぎた自由主義)に基づいた常軌を逸した考え方自体が権力者だった。
(意味不明。)

いい資本主義はうまく統制され、悪い資本主義は国家の関与がなく無秩序だ。
(フランス人は、だからフランスが統治する、と結論したいらしい。こんなことを言い出すくらいなら、ドイツ人とけんかをしていてくれた方がまだましだと思う。)

資本主義の悪い面ばかりが残った。
(そんなものではないと思う。それも人間の一面だということだ。
私は冷静に受け止める。子どもでもあるまいし、自由主義がすべての悪の根源だみたいに言うのは、どうかと思う)

米国は15年も20年もの間、借金で暮らすことができた。
(それは経済学的なレトリックというものだ。現実のアメリカ人は決してそうでもない。まじめに働いている人は多い。もっと言うなら、20年間借金で暮らすことができた米国は信用があったわけだ。信用して貸していたのは誰か。そして利息を取っていたのは誰かということになる。貸した方も借りた方も責任がある。)

世界は一極でも多極でもなく実際は無極になりつつある。人々はいつか神は存在しないと気づく。
(そんなことはない。神のレトリックを持ち出すセンスも賛成できない。なりつつあるというが時間の要素を指定していないので曖昧な言明である。)

中国や日本が輸出国としてやってこられたのは米国の過剰消費のおかげだ。
(たぶん。)

米国は8千億ドルの貿易赤字。米国が生産しているものはカネであり、腐った証券。にもかかわらず消費を続けるのは反道徳的だ。
(良かろう。フランスも、反道徳的な核兵器と原子力発電をやめよう。腐った証券と腐っていない証券の見分け方を教えて欲しい。この人は言葉を操るだけだ。敢えて言えば米国が生産していたものは信用である。それは商売になる。当然である。)

米国が消費を続けられなくなったとき、需要不足に陥る。
(たぶん、中国が大量消費を始める。その前に、生活様式の転換をして、理想の方向を転換したいものだ。)

中国の経済システムは非常に脆弱。
中国の輸出総額は国内総生産GDPの40%。
日本や韓国を真似た結果。明らかに不自然。
輸出によって13億人を養おうとしても、中国は崩壊しかねない。
(歴史の発展が国によって違うのだから、不自然といわれても、困る。何も犯罪を犯したわけでもない。経済システムが安定するかどうかは、歴史の発展過程によるもので、また、2000年代にふさわしいあり方があるはずで、それはみんなで考えるべきだ。正直、中国はそれでも控えめにしていると思う。フランス人が13億人いて、中国に住んでいたらどうなっていたかと思う。そうでなくて良かった。)

中国は内需志向にすべきで、15年くらいかけて転換する。本来平等志向の強い中国にはその方があっている。中国は自分の畑をまず耕すべきだ。
(本来平等志向が強いなどと何の根拠があるのか分からないが、私には中国の全歴史は奴隷の歴史のように思える。しかしアメリカ式生活をしようとは思わない方がいいし、誰かがアメリカ式生活をしようと思うのを利用して儲けることもやめた方がいいとは思う。)

技術者や科学社の育成で米国は欧州やアジア各国にはるかに後れをとっている。経済を引っ張るのは弁護士ではなく技術者だ。
(技術者が大事というのは賛成。でも、アメリカがはるかに後れをとっているとは思えない。この人には何が見えているのだろう。)

欧州は保護主義的な障壁を確立し、域内貿易を優先すること。
(すでにそうではないのか?よく分からないが。世界が一体になる前に少し練習して、というところだ。)

欧州圏、北米圏、極東圏の三つによって再編された経済こそが有益。
(朝日新聞がインタビューにいったからこんなことをいうだけで、そのうち欧州が米国を助けてやると言いたいらしい。)

日本、中国、韓国は共通経済の可能性を探る機関を設立した方がいい。
(簡単じゃない。いろいろな損をするけれど、それを上回る得が各国にあるかどうかだ。日本と韓国は得をする点もあるが中国は得があるか。さっきまでこの人は中国は持たないと宣告していたはずで、どうするのか?)

エコノミストは考えないことで給料をもらっていた。
(確かにそうかもしれないが、たぶらかすような舌足らずなことを言わない方が世の中のためになる。そのためなら給料を払ってもいい。)

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